イベントレポート

社会貢献を標準化しよう!身近な「ひと」や「こと」から |日本財団ソーシャルイノベーションフォーラム「災害が変えた私たち」

あと1ヶ月で東日本大震災から丸8年を迎えます。

集中豪雨、台風、寒波、立て続けに日本を震災が襲っています。災害が起こると災害ボランティアが活躍しますが、誰もがそうやって行動できるわけでありません。

育児や介護など見守らねばならない家族がいる、学業がある、さらに、「自分なんかにできることがあるのか?」「自分はいい人ぶりたいだけなのではないか」という迷いも、ボランティア活動、社会貢献活動に躊躇する理由はたくさんあります。

「社会貢献する」って難しい?

社会貢献とはそんなに難しいことなのでしょうか。できる人とできない人に分断されてしまうような、「大げさなこと」なのでしょうか。

2018年9月に行われた日本財団ソーシャルイノベーションフォーラムの「災害が変えた私たち」という分科会では、年若く多感な年代で東日本大震災を経験し、それぞれ「自分のできること」を追求し、行動している5人が登壇しました。

登壇者の自己紹介から見えてくる社会貢献の形

彼らの思い、迷い、そして行動から、これからの社会貢献と、自分自身にどんなことができるのか?を考えました。分科会は登壇者5人の自己紹介から始まります。

①田中豪さん(モデレーター)

転職した年に東日本大震災があったという田中さん。震災直後の被災地に入り、必要な物資を必要なところへ、直接届ける活動をしたそうです。その後、立ち上げた事業の拠点を福島へ移し、仕事という、生活を作る上で大切な部分を支援することで、被災地に貢献しています。

②根岸えまさん


普通の大学生として都内で生活していた時に震災を経験した根岸さん。その時「私なんかが行って何ができる?」と思いながら被災地へボランティアとして入ったそうです。そこで見つけた、震災を吹き飛ばす勢いの「カッコイイ大人たち」に魅せられ、現在は宮城県気仙沼でUターンやIターンのひとへ就職支援と、地元の子どもたちに地元の魅力を伝える仕事をしています。

③細田侑さん


東京都墨田区出身の細田さん。大学時代、田舎への憧れからヒッチハイクをしていた時に震災があったそうです。そのまま気仙沼へ行き、がれき撤去などの他、支援のアセスメントに携わりました。その後被災地が落ち着いてきたころ、お祭りを復活させて被災地を元気にする活動を始め、現在も続けています。

④宮本直美さん


自分らしい働き方(起業やフリーランス)を、子育て中の女性に推進しているPowerWomenプロジェクト代表の宮本さん。震災では、被災地のママが赤ちゃんを残して自殺するというショックな出来事を知り、被災したママたちの気持ちが「前を向く」ために、「仕事」が必要だと考えたそうです。役割や生きがいとなる仕事こそが、被災地のママたちの「前を向く力」になると信じて「プチ起業」という働き方を提唱し続けています。

⑤市川太一さん

大学受験当日に震災が起き、大学時代を都内で過ごした市川さん。福島育ちなのに震災を経験していない自分と、被災地でもある故郷に戻る事よりも、好きな海外を優先して出掛けてしまう自分が強いコンプレックスになっていたそうです。そんな中で若者の国際会議OneYoungForumに参加したのを機に、福島の高校生とクラウドファンディングを行い大成功。今は「好きなことをするのが社会貢献!」という考えで活動しています。

日本財団ソーシャルイノベーションフォーラム「災害が変えた私たち」

ここから登壇者全員が参加してパネルディスカッションを行いました。東日本大震災という災害は、彼らをどう変えたのでしょうか。

震災で私たちは変わった。でも悪いことばかりではなかった?

「震災が起こって価値観が大きく揺さぶられた」と根岸さんは言います。「個人では物の価値って何だろうと問い直すことが増えましたし、社会全体としては物質的豊かさよりも精神的な豊かさを重視するようになったと思います。」

細田さんと宮本さんは「社会がつながりをもう一度重視して大切にするようになった」と口をそろえました。田中さんは「ママのつながりというものは地域のセーフティーネットになっている」と頷きました。

震災が変えてしまったものは大きいけれど、悪いことばかりではなかったと、会場のみんなが頷きました。

細田さんは「このまま境界線のない社会になるといいな」と言い、この言葉に宮本さんが「世代や課題を超える大きなテーマでつながりあえたらいい」と重ねました。つながりあうための手段としての社会貢献。実際に行動してみて感じたことを次の質問で話し合いました。

社会貢献って大げさなことじゃなくて「一緒に行動する」ことかもしれない

支援する側と支援される側が分かれているように見える社会貢献ですが、実際に行動してみた登壇者の5人は違う印象を持ったようです。

根岸さんは「支える、やってあげるというよりも「一緒に街を盛り上げよう」という感じで行動していた」と話します。細田さんも頷いて「一緒に動いて、一緒に街を変えていく感じだった」と振り返ります。

田中さんは「社会貢献というと大それたことと考えられがちだけれど、そうじゃない。親しい友達へのサプライズの延長線上にある感じ」だと語りました。みんなでみんなを支える社会を維持するためには何ができるのでしょうか。

社会貢献を標準化しよう!目の前のひとやことを大切にしよう!

市川さんが「社会貢献を標準化したい。標準装備して、もっとシンプルに構えずに行動できるようになるといい」と話しました。「社会貢献を標準化!」カッコイイ!と会場が盛り上がります。

「社会貢献は小さなことでいい。小さいけれどポジティブな連鎖を広げていくことが大切」と田中さん。そして「構えず自然にアクションできる時がある」とも。

さらに「助けたいと思った時にすぐに手助けできる、行動に移せる日本になれるといいですね」と宮本さん。「行動したいと思った思いを大切にしてほしい。そしてまずは目の前のひとを大切にしよう」と根岸さんが呼びかけました。

細田さんは「自然災害は身近にある。でもネガティブなことばかりではない。学ぶこともたくさんあって、つながりが新たに生まれるきっかけになることもわかった」と話します。会場全体が大きく頷きました。

取材後記

市川さんが「今日帰ったら何か小さなことでワンアクションしよう!」と呼び掛けて締めくくり、参加者全員と登壇者で記念撮影。なごやかさと前向きな明るさの中で閉会しました。

荷物をまとめ、帰路につきながら私は考えました。私にできることは何だろう。小さなことでいい、身近なひとやことを大切にすること。もしかして、ごみの分別をしっかりする、などもそうでしょうか。環境への負担を減らすことにつながるから、社会貢献。

あいさつはどうでしょうか。近所のひととのつながりが生まれて、明るい気持ちになって、街の防犯にも役立つあいさつ。まさに社会貢献。そうか、こういうことでいいんだ。私は気が付きました。こういうことが社会貢献で、こういうことから始めればいい。

つい、「大きなこと」を思い浮かべがちな社会貢献ですが、身近なひとやことを大切にすることから始まる、とはこういうことなのですね。まさに身近な事柄が「大きなこと」へと結びついていく、「つながり」。社会貢献とは「つながること」なのだと考えながら、家族の待つ自宅へと急いだ夜でした。

日本財団ソーシャルイノベーションフォーラム2018
https://www.nippon-foundation.or.jp/news/pr/2018/44.html

麓 加誉子
麓 加誉子
麓 加誉子(ふもと かよこ) フリーライター。
市民活動団体「パトラン松戸チーム」の広報も。
興味があるのは、不登校、教育問題、ジェンダーの問題、広報、PR、ブランディング、NPO、社会課題など。
幅広い好奇心でさまざまな分野に挑戦中。
小中学生3人の子どもたちは不登校。「毎日明るくのびのびと」、をモットーに生活中。
趣味は、服作り、家具作り、ランニング、家庭菜園、編み物、読書など。