カルトナージュ講師 萩谷麻衣子さん
ママの働き方

10年続く人気教室から学ぶ「好き」のはじめ方、続け方

予約の取れない人気のカルトナージュ教室を主宰するのは、東京都稲城市にお住いの萩谷麻衣子さん。

カルトナージュ講師として起業したのはママになる前。その後出産を経て、今は子育てと仕事に忙しい毎日を送っています。

10年続けているお仕事の源である「好き」はどこで見つけたのか、そして継続しているその想いとは?10年続く人気教室から「好き」の始め方、続け方を見つけてみました。

教室の予約のほとんどがブログから埋まるという萩谷さん。そのブログに綴られたお仕事への想いも紹介します。

カルトナージュ講師 萩谷麻衣子さん

萩谷麻衣子
カルトナージュ教室アトリエキーム主宰
Bolg: https://ameblo.jp/keym2010/

<目次>

◆カルトナージュとは?
◆カルトナージュとの出会い
◆好きから「仕事」に。自宅教室を始めたきっかけ
◆好きにつながる「原体験」
◆仕事をする理由
◆続ける方法

カルトナージュとは?

カルトナージュとはフランス語で「厚紙細工」という意味。

18世紀に生まれたフランスの伝統的手工芸で、その名のとおり、組み立てた厚紙に美しい柄の布や紙を貼って仕上げる厚紙細工です。手帳カバー、フォトスタンド、ジュエリーボックスなど身の回りにある様々な小物や雑貨を、用途に応じてお好みの大きさ・デザイン・素材で作ることができます。

カルトナージュ講師 萩谷麻衣子さん

カルトナージュとの出会い

子供のころから将来の夢は「保育士」に決めていたという萩谷さん。

念願叶って保育士となり、短大卒業後は保育園に勤務。季節や行事に合わせて作る壁面や子どもたちの製作の事前準備など”工作”の仕事も楽しんでいたそう。

その後、結婚を機に保育士を退職。
復職を考えつつも、勤務地の近い保育園が無いことや、一度は違う分野で仕事をしてみたいとの思いで大手保険会社に就職。

保育士時代よりも時間ができたことで、クレイフラワー・キャンドル・ソーイングなどたくさんの習い事に通ったと言います。

そんとき、憧れていた先輩が職場でカルトナージュで作ったステーショナリーを使っていたのが「カルトナージュ」との出会いだそう。

萩谷さん「どこにも売っていない、自分好みで作れる“世界でたった1つの素敵な布箱”に一瞬で心を奪われた私は、すぐにカルトナージュのレッスンに通い始めました。」

好きから「仕事」に。自宅教室を始めたきっかけ

萩谷さん)「趣味で習い始めたカルトナージュでしたが、家事育児と両立させながら働く先生の自然体で無理のない姿がとても魅力的に感じました。好きなものに囲まれた“自宅”を仕事場にすることにも惹かれました。
カルトナージュを始め、好きなものに囲まれて過ごす毎日は、以前より豊かに感じ…こんな気持ちになれることを伝えたくなり、習い始めて3年後、2010年に教室を始めました。」

好きなことを仕事にしたい。人と人を繋げたい。

そんな想いでカルトナージュ教室を始める際、萩谷さんには心に決めたルールがあったそう。それは「昔からの友達は誘わない」ということ。

萩谷さん)「もちろん興味があって来てくれたら素直に嬉しいしありがたいけれど、そこを頼りにはしたくなかったんです。だから文字通りゼロからのスタートでした。
最初は毎回マンツーマンレッスンだったし、たくさんの方と出会いたかったから駅前でチラシだって配りました。今まで広告は1度も出していません。要は本当に地道な積み重ね。
ご縁があって出会った方と繋がって、広がって。今のアトリエキームがあります」

カルトナージュ講師 萩谷麻衣子さん

地道に続けるなかで、徐々にレッスンの参加者も増えていきます。お教室をはじめて3年目、週に3~4回、午前も午後もレッスンを開催し、自宅教室には毎月100名弱の生徒さんが参加していた時期に、最初の壁にぶつかったそう。

萩谷さん)「この状況を維持しているだけでは、絶対にダメだということを感じました。
卒業していく生徒さんが技術を取得して…終わり、ということだけは教室をはじめた者としてなんとしても避けたかったんです。
それと同時に考えていたのが、カルトナージュが世の中に10年後も20年後も必要とされるにはどうしたらいいのだろう…ということでした。」

そこからアトリエキームを卒業して「講師をしてみたい!」と手を上げてくれた方とチームを組んでレッスンが出来るようになったと言います。

萩谷さん)「状況を整えるために走りまわり、現在に至ります。
高齢者施設や保育所などでもレッスンを展開していて『なぜ高齢者施設なの?』『保育所なでカルトナージュなの?』と思われる方もいらっしゃると思うのですが、私は元々児童福祉科を卒業。保育士として仕事をしていた時期もあるし、高齢者施設でのボランティア経験もあります。
アトリエキームだからできること。カルトナージュが必要とされる場所と考えたときに、ごく自然に出てきた答えだったのです。」

現在、高齢者施設や保育所では年間3000名以上の方がレッスンに参加しているとのこと。

萩谷さん)「これからもっともっと広がっていきます。これは確信があります。
講師にも生徒さんにも、笑顔でいて欲しい。それが私の生きがいでもあります。」

カルトナージュ講師 萩谷麻衣子さん

好きにつながる「原体験」

カルトナージュと偶然の出会いから起業し、教室開催に至る萩谷さんですが、モノづくりに対する原体験についてもブログで触れています。

手先が器用な母の影響

「なんで保育士からカルトナージュの先生になったのか分かった!」

そう言ったのは萩谷さんの友人の旦那様。萩谷さんのお母様が作られた作品を見て、萩谷さんのルーツはお母様にある、と感じたのだそう。

萩谷さん)「よく考えると小さい頃から、母があれこれ作っていたのを見ていた気がします。お教室の生徒さんともそういった話になると、ご両親どちらかが物作りが好きだったりします。やっぱり親を見て子は育つのですね。」

引用元「ルーツ」 https://ameblo.jp/keym2010/entry-10683645736.html

人見知りだった小学生の頃

いつも笑顔で周りに人が集まるお教室の様子や、華奢に見えつつ重い資材を軽々運ぶパワフルな今の姿から想像もできませんが、外で遊ぶより屋内で絵を描いたりひとりで遊ぶのが好きな、静かな子供だったそう。

環境が変わることが不安で、就学前検診では泣いてしまい先生を困らせたこともあったそうです。

萩谷さん)「小学校に入って少し経った頃、『物語を作ろう』という授業がありました。
主人公も、ストーリーも全部自分で考え、本にする授業です。私はキツネの女の子が旅をするという内容で本を作ったんですが、5ミリ×5ミリ位の大きさにちぎった折り紙で絵を描き、全10ページを完成させました。
私からしてみると日常の遊びの延長だったんですが、当時の先生がびっくりしてみんなの前で大きく取り上げてくださったんです。
それをきっかけにしてあっという間に周りの子と仲良くなれました。
私の物作りの原点は、間違いなくあのちぎり絵の本です。
そしてそれだけではなく、人見知りだった自分をあの時変えることが出来たんだと思います。」

引用元「出会いときっかけ」https://ameblo.jp/keym2010/entry-10512891553.html

仕事をする理由

作品が完成した時に、生徒さんが見ているものと、講師として見える景色は同じなのか異なるのか。

とある高齢者施設で、デイサービスの利用者さんが取り組んだ作品の展示会を兼ね、ケアマネージャーさんやデイサービスに通うご家族、関係者を対象に行ったカルトナージュ体験会での様子を振り返ったときのことを、こう振り返っています。

カルトナージュ講師 萩谷麻衣子さん

萩谷さん)「奥様がデイサービスに通われていて、飾られている作品を見に来てくださった男性。空き時間で、カルトナージュ体験をしていただき、奥様が普段カルトナージュをこんな風に楽しんでいるんだということを知っていただく機会になりました。

『これと同じものを、妻も作って持って帰ってきていたよ』
『帰って見せたら、驚くんじゃないかな』
『あなた意外と上手ねって言われるよ』

照れながらもそんなお話が聞けて、私も嬉しかったです。

カルトナージュ講師 萩谷麻衣子さん

ラッピングして完成!ものすごくいい笑顔を見せてくださいました。
私はこの瞬間のためにこの仕事をしているのだ、といつも思います。

今、目の前にいる人を笑顔に。 カルトナージュという技術を使いながら
「こういうことがしたい」という、想い描いていた毎日を送っています。」

引用元)この仕事をする理由 https://ameblo.jp/keym2010/entry-12403230952.html

続ける方法

萩谷さん)「教室を主宰して10年目。同時期に教室を始めたり、なにか自分で仕事をしていたりする友人の半分以上はもう辞めてしまっていますし、『もう、お教室やめようかなって思っているの。』と相談されることもあります。

例えば自宅教室だと
・お客様が来てくれない
・準備にとても時間がかかる
などなど、辞める理由なんて探せば山のように出てくるもんです。

私自身も悩みはたくさんあったし、今も悩みはあります。
けれど、一度も『カルトナージュやめてやるー!!』とは思わなかったんです。

でも、これは別に教室運営にだけ言えることじゃないと思うんです。

『毎日これをしよう』って思う些細なことだって、続けるのはとても大変。
だけどその先に”こうなりたい”っていう未来があるならやめないことをオススメしたい。

やめたらそこで止まってしまいます。
毎日走るっていう目標だって、どうしても気分が乗らなければ5分だけだっていいと思うんです。 波なんてあって当たり前。

ここまでかなっていう線引きをしているのは、誰でもない自分だということ。
夢を叶える一歩は、やめないこと。
あの人だから叶えられたんだ、ってことじゃない。

もっともっと、自分に期待して欲しいなぁ、と心から思います。

私も、10年・・・ 20年・・・
今と同じ感じでずっとカルトナージュが出来るとは思っていないから、最後は”縁側でほっこりカルトナージュ”みたいな(笑)集まった人が笑顔になるような場所を、ずっとずっと作っていきたいです。」

「好き」で始めるより「続ける」ことのほうが何倍も大変。「続ける」たったひとつの方法は「やめないこと」。当たり前のようでいて難しいことですが、萩谷さんのこんな言葉が印象的でした。

「 カルトナージュという技術を使いながら『こういうことがしたい』という想い、それに尽きる。」

自分の「好き」なことで笑顔になってくれる人がいる。そこにある喜びこそ、続けるための一番の原動力になる。そんなことを感じました。

何かやってみたい、新しいことを始めたい。そんなとき、どうしても外に目が向いてしまうもの。

「好き」が見つからない、そんな方は、どんなときに喜びや幸せを感じるか、笑顔になれるか、自分の「内側」と向き合ってみる時間を作ってみてはいかがでしょうか?

見つけた種が小さくても、育てるのを「やめない」ことで、やがて芽が出て花が咲く日を迎えられる気がしませんか?すべては自分次第、なのです。


渡邉 加奈子
渡邉 加奈子
娘が2歳のときPowerWomenプロジェクト在宅スタッフ登録をし、アンケート入力や事務局代行などを行う。その後【笑顔で働きたいママのフェスタ】イベント本部のスタッフとして、パートタイム勤務を経て正社員に。第2子の産休育休を経て現在は短時間正社員となる。ふたりの子供たちに挟まれて寝るのが何よりの幸せ。育児がひと段落したら趣味の切り絵と三味線を再開するのが夢。
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