暮らし・生活

ママ議員が夜の会合に行くと「子どもはいいのか」と怒られる。ママが子育てしながら働きやすい社会とは?

2015年12月8日(火)に行われた、「笑顔で働きたいママのフェスタ in 青山」。

そのフェスタの中で、「東京から考える、産む・育てる・働く『子育てしながら働きやすい社会』とは?」をテーマにしたパネルディスカッションが行われました。

登壇者は、区議会議員さん三名を含む、以下の方々。

  • 荻野久美子(株式会社マミーゴー代表取締役) 荻野 久美子(株式会社マミーゴー)
  • 清家あい(港区議会議員) 清家 あい(港区議会議員)
  • 三次由梨香(江東区議会議員) 三次 由梨香(江東区議会議員)
  • 酒井麻子(酒井税理士事務所代表) 酒井 麻子(酒井税理士事務所代表)
  • やなざわ亜紀(港区議会議員) やなざわ亜紀(港区議会議員)
  • 滝田加奈子(日本コミュニケーション育児協会代表理事) コーディネーター 滝田 加奈子(日本コミュニケーション育児協会代表理事)

働いているママさん、これから働こうとしているママさんにとって、とても気になるテーマとスピーカーが揃ったこのパネルディスカッション、その内容の一部をお送りします。

今の仕事は子どもの頃からなりたかった職業?

滝田加奈子(日本コミュニケーション育児協会代表理事) 滝田
最初に私から16問の質問を挙げ、スピーカーの皆さんに「○」か「×」かを上げてもらいました。その中で印象的だった答えを皆さんに訊いていこうと思います。

まず「今の職業は子どもの頃からなりたかった職業だ」という質問、酒井さんだけが「○」で、他の方は「×」でした。

酒井麻子(酒井税理士事務所代表) 酒井
小学校の頃の夢がキャリアウーマンだったんです。ガラス張りのビルをかつかつ歩くイメージですね。

その後、中学1年の時に受験勉強をしたくない、OLでコピー取りとお茶汲みをしたくない、と思って商業高校を選び、そのまま税理士になりました。

三次由梨香(江東区議会議員) 三次
私は小さい頃からお嫁さんと保育士になりたいと思っていました。
それで、チャイルドマインダーとベビーシッターの資格を取って、起業しました。24時間営業の保育所をしたかったんですが、その時は働ける人がいなくて、その夢は叶えられませんでした。

皆さんには「好きなことを仕事にした方がいいですよ」とは言いいますが、自分自身は自分が嫌いなことをやっています。
政治家と政治に不信感があったから、そこを自分が頑張っていきたいと思って議員になりました。

他にお仕事にしている不動産業も、「不動産屋は胡散臭い」と思っていたところが原点です。

清家あい(港区議会議員) 清家
私はずっとジャーナリストになりたかったので、夢は叶った感じです。
ただ、出産を考えると勤務時間の問題があり、子どものことを考えて辞め、その後に議員になりました。

やなざわ亜紀(港区議会議員) やなざわ
私は、小さい頃から人を助ける職業がしたくて、医者になりたいと思っていました。
医者として身体を治すか、議員として制度を直すかという「何を」の部分で違いはありますが、「良くする」という点では同じですね。やりがいを感じています。

荻野久美子(株式会社マミーゴー代表取締役) 荻野
私は専業主婦が夢でした。
母はずっと働いていたんですが、家がずっと貧乏で、短大を卒業する時に住む家も食べるものもないという状態になって専業主婦どころではなくなり、20歳の時に建築の会社を兄と立ち上げました。

家族のために仕事を無我夢中でやっていて、振り返ったら仕事は自己成長をさせてくれるものだと25歳の時に思い、30歳の時に会社を立ち上げました。

仕事と子育ての両立、どうしている?

滝田加奈子(日本コミュニケーション育児協会代表理事) 滝田
では次のテーマ、皆さん、お仕事と子育ての両立はどうしていますか?

三次由梨香(江東区議会議員) 三次
ここにいる皆さん全員の課題だと思うんですが、すごい大変ですよね。特に子どもに熱を出されちゃったりしたら。

滝田加奈子(日本コミュニケーション育児協会代表理事) 滝田
議会の中って託児所や保育室はないんですか?

三次由梨香(江東区議会議員) 三次
ないです。「江東区役所内に託児施設を作ってほしい。役所がロールモデルとなってほしい」と話していたんですが、「それよりも会議室がほしいぐらい、部屋とスペースがない」と言われてしまいました。

夜の会合に行くと、シングルマザーとして子育てをしていて「なんで夜に来てるの?」と言われてしまうので、行かないようにになりました。今は、月に1回はベビーシッターさんにお願いしています。

清家あい(港区議会議員) 清家
うちは旦那さんの実家が近いので、フル回転で面倒を見てもらっています。
私の妹も含めて、みんなに手伝ってもらってなんとかできている状況。これだけ手伝ってくれる人がいても、制度の必要性を感じます。

やなざわ亜紀(港区議会議員) やなざわ
私の実家は四国の徳島で、遠いんです。
普段はシングルマザーなので大変ですね。子どもを送って仕事の準備をして、夜の会合に行くと、三次さんと同じく「子どもはどうしたんだ」と言われるのは、女性で損している部分だと感じます。

最近は子育て支援に取り組んでいることもあって「困っていることがあったら言ってね」と言ってくれる近所のママさんが増えました。元の夫にも全面協力してもらっています。

酒井麻子(酒井税理士事務所代表) 酒井
うちは主人が料理人なんですが、朝に会うだけなんです。ただ、主人がほとんど家事をしてくれています。朝ごはん、掃除、洗濯と、「イクメン」というよりは主夫をしてくれていて、自分は完璧な母親じゃなくてもいいかなと思い、あまり考えないようにしています。

荻野久美子(株式会社マミーゴー代表取締役) 荻野
私は仕事と育児をどっちも両立したいと思っていて、自分の会社では子連れワークを推奨しています。

滝田加奈子(日本コミュニケーション育児協会代表理事) 滝田
カンガルーワークってよく言いますよね。

荻野久美子(株式会社マミーゴー代表取締役) 荻野
はい、スタッフも全員子連れワークで、会社にキッズスペースを設けて、子どもたちが遊んでいる傍らで仕事をしています。

在宅ワークも推奨していて、13時までオフィスで仕事をして、子どもを迎えに行って、家に帰ってから在宅ワークをする感じです。仕事に生活を無理に当てはめるのではなくて、生活の中に仕事を当てはめるようにしています。

行政の子育て支援は十分? 足りない?

滝田加奈子(日本コミュニケーション育児協会代表理事) 滝田
「皆さんにとって、東京の子育て支援は十分に感じられますか?」という質問もしました。
この答えが面白くて、議員さん3人は「×」と答えていて、他のお二人は「○」と答えています。

三次由梨香(江東区議会議員) 三次
保育園の環境など、働く環境が整ってないと感じます。
お子さんを作りたくないと言う夫婦が理由として挙げるのは「お金がかかるから」。だから少子化が進むんですよね。子育てに関してお金がかからない制度があれば、日本の経済にもプラスの効果を生むと思います。

滝田加奈子(日本コミュニケーション育児協会代表理事) 滝田
いらっしゃっている会場の皆さんにも訊いてみましょうか。
(会場の皆さん、手を挙げる)
「東京の子育て支援はよくやっている」が少数、「まだまだ」が多数のご意見ですね。

清家あい(港区議会議員) 清家
どういうところが「まだまだ」と気になるのかをうかがいたいですね。

滝田加奈子(日本コミュニケーション育児協会代表理事) 滝田
では、会場の何名かの方に訊いてみましょう。

(お客さん)
私は群馬県の岡崎に住んでいるんですが、東京のママは働きたくても保育園がネックになる話を多く聞きます。もしくは、子連れワークができる環境がもっと増えるといいですね。

(お客さん)
私は子どもが二人いて、保育園は70人待ちと言われたところ、運良く入れたんですね。ただ、やはり保育園に入れない人、入りたいと言っている人を周りでよく聞きます。

滝田加奈子(日本コミュニケーション育児協会代表理事) 滝田
学童保育の問題もあるのではないでしょうか。「小1の壁」とよく言われますよね。
また、現状では小学3年生で追い出されてしまうところが多く、4年生になったら一人で留守番ができるのかと言うと、それも難しいですよね。

清家あい(港区議会議員) 清家
港区では、学童保育はとても増やしたんです。選り好みをしなければかなり空いている状況で、6年生までいられます。

都心のご家庭は、実家と離れて子育てをされている人が多く、サポートが少ないです。外遊びも足りていないのが課題ですね。

やなざわ亜紀(港区議会議員) やなざわ
いま清家さんに言ってもらったんですが、人手は足りないですね。

酒井麻子(酒井税理士事務所代表) 酒井
私は保育園にすぐ入れたので苦労はしていないのもありますが、東京都自体は認証保育園や個別のサービスもあるので、支援が足りないとは感じていないです。

ただ、自分が住んでいる江戸川区は、働くママへの支援が少ないですね。せっかく東京都がいい制度を作っているのに、なんで江戸川区がやってくれないのか、と感じます。

23区の中で保育園の支援がないのは江戸川区を含めた2区だけで、江戸川区の子ども手当は保育園に行くと打ち切りになるんです。幼稚園については、日本一の補助が出るんですけれどね。

荻野久美子(株式会社マミーゴー代表取締役) 荻野
私は港区に住んでいるんですが、区立の幼稚園の人数の枠が増えて、延長保育もつくようになりました。
3歳の長女は、来年からその区立の幼稚園の入園が決まり、そのおかげもあって、3人目のことも考えられる余裕が生まれました。
議員さんのお力があってのものです!ありがとうございます。

子育てをしやすい社会とは?

滝田加奈子(日本コミュニケーション育児協会代表理事) 滝田
やはり声を上げていかないと変わらないですよね。
では、皆さんにとって子育てしながら働きやすい社会ってどんな社会でしょうか? 理想はありますか?

三次由梨香(江東区議会議員) 三次
自分が言っている政策で「江東大家族」というものがあります。
「まんが日本昔ばなし」に出てくるような家族って、親はあまり出てこなくて、おじいちゃん、おばあちゃん、子どもの関係性なんですよね。
そうやって、子育てを終わった年代の人たちが地域で育てる、ということが一つのモデルになるんじゃないか、そこで繋がり合うのが大切なんじゃないかと思っています。
それが結果的に働きやすい社会になるのではないでしょうか。

清家あい(港区議会議員) 清家
男性の意識が変わって、育児参加をしてくれないと、女性の社会での働き方は変わっていかないですね。
また、シングルマザーのようないろんな家族の在り方がもっと社会で認められてほしいです。

滝田加奈子(日本コミュニケーション育児協会代表理事) 滝田
違いを認めることは大切ですね。
「みんな違ってみんないい」っていう言葉はほんとそうだなと思います。

やなざわ亜紀(港区議会議員) やなざわ
私はシングルマザーになって、ただでさえ大変だと思っていた子育てがさらに大変になりました。
例えば自分の子どもが2歳で私が限界を感じていたとき、たまたま友だちが来てくれて、靴を履かせてくれただけでもすごくありがたかった覚えがあります。

娘に寂しい想いをさせていないかが心配なこともあり、ひとり親が子育てしやすい社会は、どんな子育て世帯にとっても子育てしやすい社会であると思います。その視点で支援を充実させていきたいです。

酒井麻子(酒井税理士事務所代表) 酒井
私も三次さんと同じく地域の中で育てられたんですが、親が働いていても周りの人たちがサポートしてくれたんですよね。
時には怒られることもありましたが、今はそうやって親以外の人から怒られる機会がなくなっているのも問題ではないかと思います。
地域やおじいちゃん・おばあちゃんで子育てをできなくなっていますよね。

荻野久美子(株式会社マミーゴー代表取締役) 荻野
私は経営者として、企業が「子どもウェルカム」という環境を作っていってほしいです。
日本は中小企業が9割なのでなかなか難しいとは思いますが、会社にキッズスペースがあるだけでも「この会社は受け入れてくれるんだ」と安心できると思います。
そういう会社が増えていってほしいですね。

滝田加奈子(日本コミュニケーション育児協会代表理事) 滝田
もっと訊いてみたいことはあったのですが、お時間が来てしましました。

このパネルディスカッションを聞いてくださった方々も、ぜひこれから声を上げて、発信していってほしいと思います。
皆さん、今日はお忙しい中ありがとうございました。


犬養 拓
犬養 拓
「ともえ」編集長。 株式会社電通でクリエイティブ職や雑誌担当として12年間働いた後、独立。 2015年に生まれたばかりの男の子の父親。好きなものはスイーツとリラックマ。
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