お腹に赤ちゃんがやってきた!うれしい出来事であると同時に、これからの家族のこと、お金のこと、ちゃんと暮らしていけるだろうかと不安にもなりますよね。今回は、出産前後のお金の不安をズバッと解決するべく「出産前後のお金の話」をシリーズ化!全4回に渡って、費用のこと、制度のこと、保険のことなどをスッキリ整理します。
出産前後のお金の話シリーズの1回目となる今回お伝えするのは「費用のこと」。出産前後にかかるお金を徹底調査しましたよ!
健診や出産にはいくらかかるの?
まずは健診から出産までにかかる費用についてです。妊娠は病気ではありませんから、妊娠や出産に異常がなければ健康保険は適用されず、費用は全額自己負担となります。そう聞くと何十万円もかかるのかと心配されるかもしれませんが、妊婦健診には自治体からの補助があり、出産には健康保険から「出産育児一時金」「家族出産育児一時金」の支給がありますから大丈夫です。詳しく見ていきましょう。
妊婦健診にかかる費用
妊婦健診は、出産までに14回程度受けることになります。初診から何度目かの健診で赤ちゃんの心拍が確認される頃になると、病院から『妊娠届出書(妊娠届)』をもらえます。自治体によっては、役所でもらうこともあるので確認してください。妊娠届を役所に提出すると、母子手帳と共に妊婦健診費用の助成を受けるために必要な「受診券」または「補助券」を受け取れます。「受診券」はそのチケットで国の推奨する検査項目が受けられるチケットです。「補助券」はそのチケットで補助する金額が決まっているチケットです。どちらの方式かは自治体によって異なります。以降の妊婦健診は、この「受診券」「補助券」を利用して、自治体の助成を受けながら受診することができます。
自己負担額はあるの?
妊婦健診にかかる費用は、検査内容によって1回あたり5000円~10000円程度の金額になります。14回程度となると、本来ならばかなりの金額になる計算ですが、このうち自費で支払うのは、初診から受診券・補助券を受け取るまでの数回の健診代と、毎回の健診のうち補助券を充てた上での不足分や、受診券の対象になっていない検査の費用のみになります。負担がかなり軽減されますね。
里帰り出産時の検診代は?
帰り出産などで居住地以外で受診した場合でも、領収書を取っておき後日払い戻すなどの方法で助成を受けることができます。申請の方法などは自治体によりますので、里帰りの予定がある人は事前に確認しておきましょう。
公的な健康保険が適用になるケース
補足として、妊娠中のトラブルにより医療措置が必要になった場合は健康保険が適用されます。例えば、切迫早産や前置胎盤などで検査をする、重度のつわりで入院する、などは健康保険の適用対象となります。
この項目の参考資料
厚生労働省『妊婦健康診査の公費負担の状況に係る調査結果について』平成28年7月29日
分娩にかかる費用
厚生労働省の調査(H24年度)によりますと、出産費用の全国平均値は486,376円だということです。都道府県別では、最高値は東京都の586,146円、最低値が鳥取県の399,501円となっています。地域によって大きな金額差がありますね。
公的な健康保険から支給される一時金
「出産育児一時金」「家族出産育児一時金」は、健康保険の被保険者とその被扶養者が出産したときに申請すれば、1児につき42万円が支給されます(ただし、産科医療補償制度に加入されていない医療機関等で出産された場合は40.4万円となります)。出産された胎児数分だけ支給されますので、双生児の場合は2人分が支給されます。
厚生労働省の調査によれば、先ほどの全国平均値である486,376円から「室料差額」「産科医療補償制度にかかる金額」「お祝い膳など直接分娩に関わらない費用」を引いた金額は、413,087円となっています。この金額を「出産育児一時金」の42万円でちょうど賄えるぐらいに設定されているわけですね。
一時金の金額内でまかなえない事も
上記の金額はあくまで平均値。実際は施設によって出産費用はさまざまです。実際の出産費用から42万円の支給を差し引いた不足分が自費でかかる費用になるので、例えば、設備の整った個室を借るなどして室料差額がかかる場合や、充実したサービスが売りの施設で医療外費用が高くかかる場合などは、出産費用自体が高くなり、自費になる金額も高くなります。後でビックリすることのないように、ホームページや直接尋ねるなどして、お世話になる施設でのおおよその出産費用を確認しておきましょう。
この項目の参考資料
厚生労働省『出産育児一時金の見直しについて』平成26年7月7日
赤ちゃん用品を揃えるためにはいくらかかるの?
赤ちゃん用品にかかる金額は、『どこまでこだわるか』によって大きく変わってきます。ベビーカーやチャイルドシートは、機能やブランドにこだわるかどうかで、数万円以上の値段差があります。自分に「必要なこだわり」と「必要のないこだわり」を考えて、お金をかけるところにはかける、絞るところは絞るように、賢く買い揃えたいところです。
育児用品のサイトやプレママ雑誌には“買うものリスト”が載っていたりもしますが、『全てを買い揃えなければ!』と考えるとかなりの金額になってしまいますよね。どんなものが必要になるかは家庭の環境によって違いますから、リストの通りに全てを買う必要はありません。
購入する物しない物をどうやって決めるの?
では自分たちに必要なものはどうリストアップすればいいでしょうか。1つの方法として、生活シーンを想像しながら必要なものをジャンル分けすれば、リストアップしやすいと思います。例えば、「寝かせるとき」「授乳のとき」「出かけるとき」「お風呂のとき」「オムツ替え」などのシーンに分けて必要なものを考えるのです。
無駄な出費を防ぐコツ
必要なものがリストアップできたら、今度は「生まれる前に買っておくもの」「生まれてから選んでも間に合うもの」に分けます。生まれてからでも間に合うものは、実際の生活の様子を見ながら選ぶことで、「買ったのに必要なかった」という事態を防ぐことができ、無駄な出費を抑えられます。
具体的にいくらと金額を示すなら、日用品や衣類など細々した用品を揃えるだけでも5万円ほどの予算が必要になりそうです。その他チャイルドシートやベビーベッド、ベビーカーなどは値段差も大きいですが、低価格帯のものを選んでも合わせて5万円ぐらいにはなるでしょう。お下がりやレンタルも上手く活用しながら準備していきたいですね。
その他には、どんな費用を考えておけばいい?
赤ちゃん用品の他に、ママに必要になる費用があります。入院に必要なセットを揃える費用などです。また、出産後は『妊娠前の服が体型に合わなくなった!』なんてハプニングも。授乳服なども必要になりますから、洋服代も必要な費用として考えられます。
他にも赤ちゃんの誕生によって生活環境が変わる中で、買い替えたいものが出てくるかもしれません。住んでいるアパートが狭い、車が狭い、などの悩みがあれば、引っ越しや車の買い替えは大きな出費につながります。赤ちゃんのためにエアコンを付けたい、空気清浄機がほしい、新しいデジカメやビデオカメラがほしいなど、家電を買う機会も増えそうです。
里帰り出産をする人は、実家に渡すお金がいくらか必要になるかもしれません。家族が増えることをきっかけに学資保険や生命保険に加入することもあるでしょう。
たくさんの項目を挙げましたが、家族が増えるということはそれだけ大きく生活が変化するということです。いざ赤ちゃんが誕生すれば毎日がバタバタと忙しくなりますから、時間にゆとりがあるうちに必要になるお金をリストアップして、整理してみてはいかがでしょうか。
まとめ
・検診などの自己負担:助成を受け、10,000円~30,000円程度
・分娩にかかる費用 :平均値より66,000円(出産育児一時金42万円を超える額)
・赤ちゃん用品購入 :100,000円程度~こだわりによって
・その他 :暮らしの中で買い替え・買い足しが必要なもの
【支出合計】 少なくとも200,000円程度は必要。
よって、出産準備にかかるお金は少なくとも20万円程度は必要と考えて準備しておくと良いでしょう。今回は「かかるお金」がテーマでしたが、その2では「受け取るお金」についてお伝えします!
- 横山 沙織
- ファイナンシャルプランナー(2級FP技能士・AFP)。おこづかいセミナー講師。子供金銭教育をテーマに活動する団体「FPmama Friends」に所属し、親子で学ぶおこづかい教室を開催しています。双子の娘+男の子の3児子育て中のママです。趣味は温泉巡りとベランダ菜園です。