お金

◆妊娠したらお金を考えよう: ver.3◆働く女子必見!産休・育休中のお金はどうなる?

妊娠した女性に読んでほしい出産前後のお金の話シリーズ。3回目となる今回は、現在働いている妊婦さんやプレママさんに向けて産休・育休中の手当や給付についてまとめました。働き女子には、お休み中の収入減も気になるところ。いくら受け取ることができるのかを確認して、今後の家計のやりくりについて計画しましょう。

妊娠中のトラブルで、産前休業より前に仕事を休んだら?

切迫流産や切迫早産などの妊娠中のトラブルにより仕事を休んだときは、『傷病手当金』の支給対象になる場合があります。条件を詳しく見てみましょう。

傷病手当金とは

傷病手当金は健康保険の制度です。病気休業中に被保険者とその家族の生活を保障するために設けられました。傷病手当金は、被保険者が病気やケガのために会社を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に支給されます。切迫流産などの妊娠中のトラブルも健康保険の対象になりますから、条件に合えば傷病手当金の支給を受けることができます。

傷病手当金の支給条件は、次の(1)から(4)の条件をすべて満たすことが必要です。

(1)業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること

自宅療養の期間についても支給対象となります。ただし、業務上・通勤災害によるもの(労災保険の給付対象)は支給対象外です。

(2)仕事に就くことができないこと

仕事に就くことができない状態の判定は、療養担当者の意見等を基に、被保険者の仕事の内容を考慮して判断されます。

(3)連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと

仕事を休んだ日から連続して3日間(待期)の後、4日目以降の仕事に就けなかった日に対して支給されます。待期には、有給休暇、土日・祝日等の公休日も含まれます。

(4)休業した期間について給与の支払いがないこと

待期中に給与の支払いがあったかは関係ありませんが、4日目以降の休業中は、給与が支払われている間、傷病手当金は支給されません。ただし、給与の支払いが傷病手当金の額よりも少ない場合は、差額が支給されます。

以上4つの条件をすべて満たすことが必要です。

傷病手当金の支給金額は?

1日あたり:標準報酬月額÷30日×2/3

となります。また、平成28年4月からは、出産手当金の支給と重なった場合でも傷病手当金の方が高い場合は差額が支給されることになっています。

傷病手当金は、妊娠中に限らず病気やケガのときに利用できる制度です。いざというときのためにも知っておくと安心です。

詳しくは『協会けんぽ』HP内の「病気やケガで会社を休んだとき」をご確認ください。
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat310/sb3040/r139

産前・産後休業中に支給される手当

産前・産後の働けない期間、収入はゼロ?!と心配になりますよね。出産のために会社をお休みする場合の「出産手当金」と、育児のために会社を休む場合の「育児休業給付金」の2つの手当てがあります。

出産手当金

健康保険から支給されます。被保険者が出産のために会社を休み、その間に給与の支払いを受けなかった場合は、出産の日(実際の出産が予定日後のときは出産予定日)以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から、出産の翌日以後56日目までの範囲内で、会社を休んだ期間を対象として出産手当金が支給されます。

出産日は出産の日以前の期間に含まれ、出産が予定日より遅れた場合は、遅れた期間についても出産手当金が支給されます。出産手当金の支給額は、

1日あたり:標準報酬月額÷30日×2/3

となります。会社から所属している健康保険組合に申請しましょう。

出産手当金は、出産を機に退職する人にも支給されます。また、次の2点を満たしている場合には退職後も引き続き、出産手当金の支給を受けることができます。

資格喪失後の継続給付の条件

1. 被保険者の資格を喪失をした日の前日(退職日)までに継続して1年以上の被保険者期間(健康保険任意継続の被保険者期間を除く)があること。
2. 資格喪失時に出産手当金を受けているか、または受ける条件を満たしていること。

※なお、退職日に出勤した場合は継続給付を受ける条件を満たせなくなり、資格喪失後(退職日の翌日)以降の出産手当金の支給を受けられなくなってしまうので注意が必要です。

詳しくは

『協会けんぽ 出産手当金について』をご確認ください。
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g6/cat620/r311#q7

育児休業中に受け取る給付金

産後休業(出産手当金が支給される期間)終了後からは育児休業となり、育児休業給付金が支給されます。

育児休業給付金とは

育児休業給付金は雇用保険から支給されます。そのため、支給を受けるには雇用保険に加入している必要があり、休業開始前の2年間に賃金支払基礎日数11日以上ある完全月(過去に基本手当の受給資格や高年齢受給資格の決定を受けたことがある場合は、その後のものに限る。)が12か月以上あれば、受給資格の確認を受けることができます。さらに、支給には次のような条件を満たす必要があります。

育児休業給付金の支給条件

• 育児休業期間中の各1か月ごとに、休業開始前の1か月当たりの賃金の8割以上の賃金が支払われていないこと。
• 就業している日数が、各支給単位期間(1か月ごとの期間)ごとに10日以下であること。10日を超える場合は、就業している時間が80時間以下であること。

正社員だけではなく、上記条件を満たし雇用保険に加入していれば派遣社員やアルバイト・パートも支給対象です。

育児休業給付金の支給額

育児休業給付金の支給額は、支給対象期間(1か月)当たり、原則として休業開始時の

   賃金日額×支給日数(30日※)×67%(育児休業の開始から6か月経過後は50%)
   ※ 休業終了日を含む最後の対象期間は、30日ではなく、日数分になります。

相当額となります。「賃金日額」とは、原則育児休業開始前6か月の賃金を180日で割った額のことです。

育児休業給付金の支給額「下限」と「上限」

しかし、支給額には上限額と下限額があります。

賃金日額×30=賃金月額 とし、

   賃金月額が447,300円を超える場合は、447,300円となります(上限)。
   賃金月額が74,100円を下回る場合は74,100円となります(下限)。
  (平成30年1月現在。金額は毎年8月1日に見直され変更される場合があります。)

よって、例えば賃金月額の上限に67%(6か月経過後は50%)をかけると、299,691円(6か月経過後は223,650円)が支給額の上限ということになります(下限額も同様に計算できます)。

詳しくは

また対象期間中に賃金が発生した場合は、その金額によっては支給額が減額されたり、不支給となることがあります。詳しくは『ハローワークインターネットサービス』から「育児休業給付・概要」をご確認ください。

『ハローワークインターネットサービス』
https://www.hellowork.go.jp/insurance/insurance_continue.html#g2

育児休業給付金の支給期間の延長

さらに、平成29年10月1日からは育児休業給付金の支給期間が2歳まで延長できるよう改正されました。これまでも、保育所等における保育の実施が行われないなどの理由で、子が1歳に達する日後の期間に育児休業を取得する場合は、子が1歳6か月に達する日前まで育児休業給付金の支給対象期間の延長ができました。平成29年10月1日からは、同様の理由によって子が2歳に達する日前まで育児休業給付金の支給対象期間が延長できるようになりました。

詳しくは下記リーフレットをご確認ください。
厚生労働省ほか『平成29年10月より育児休業給付金の支給期間が2歳まで延長されます』
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000169691.pdf

育児休業給付金申請の前提条件を確認しよう!

育児休業給付金は、育児休業期間終了後に職場復帰することが前提となっています。出産を機に退職することが決まっている場合は受けることができません。

出産を機に退職する場合は、失業手当の延長を!

出産を機に退職する場合、もし『育児がひと段落したらまた働きたい!』という気持ちがあるならば、失業手当の延長手続きを行いましょう。失業手当は、「雇用保険の被保険者の方が、定年、倒産、契約期間の満了等により離職したとき、失業中の生活を心配しないで新しい仕事を探し、1日も早く再就職するために支給されるもの」で、“基本手当”と呼ばれます。

雇用保険の基本手当

雇用保険の被保険者が離職して、次の1及び2のいずれにもあてはまるときは一般被保険者については基本手当が支給されます。

1. ハローワークに来所し、求職の申込みを行い、就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、本人やハローワークの努力によっても、職業に就くことができない「失業の状態」にあること。

  ※したがって、次のような状態にあるときは、基本手当を受けることができません。
o 病気やけがのため、すぐには就職できないとき
o 妊娠・出産・育児のため、すぐには就職できないとき
o 定年などで退職して、しばらく休養しようと思っているとき
o 結婚などにより家事に専念し、すぐに就職することができないと。

 2. 離職の日以前2年間に、被保険者期間が通算して12か月以上あること。

 ※被保険者期間とは、雇用保険の被保険者であった期間のうち、離職日から1か月ごとに区切っていた期間に賃金支払いの基礎となった日数が11日以上ある月を1か月と計算します。
  ※特定受給資格者又は特定理由離職者については、離職の日以前1年間に、被保険者期間が通算して6か月以上ある場合でも可。

雇用保険の受給期間「延長」について

このように、条件を見れば妊娠・出産・育児のためにすぐに就職できない場合は基本手当を受けられないのですが、受給期間を延長しておくことで、後から受給できるようになります。

本来、 基本手当を受けられる期間は離職した日の翌日から起算して1年間で、これを「受給期間」といいます。基本手当はこの受給期間中の失業している日について、所定給付日数を限度として支給されます。このとき、本人の病気やケガ、妊娠、出産・育児、親族等の看護・介護等のために退職後引き続き30日以上職業に就くことができない状態の場合、受給期間の満了日を延長することができます。これにより、本来の受給期間(1年)に職業に就くことができない状態の日数(最大3年間)を延長させることが可能です。

延長の手続きは、引き続き30日以上継続して職業に就くことができなくなった日の翌日以降、早期に行うのが原則ですが、延長後の受給期間の最後の日までの間であれば、申請は可能です。受給期間延長申請書に離職票(受給資格の決定を受けていない場合)又は受給資格者証(受給資格の決定を受けている場合)を添付し、公共職業安定所に提出しましょう。延長の申請は、お住まいの地域の公共職業安定所へ直接赴くか、郵送、代理人による申請も可能です。

雇用保険の基本手当、受給額について

基本手当で受け取れる金額は、人によって違います。

日額手当×所定給付日数=受け取れる金額の総額

となるのですが、「日額手当」も「所定給付日数」も人によって様々です。

まず、日額手当は、賃金日額(退職前の6カ月間の給与÷180日)の金額区分や年齢区分で決められた計算式を当てはめて計算され、賃金日額の約50%~80%の給付率に決まります。

その日額手当を「所定給付日数」分だけ受け取れるのですが、所定給付日数は、年齢、雇用保険の被保険者であった期間、離職の理由などによって、90日~360日の間で決められます。

今すぐに働くことはできなくても、数年後に再就職する際にはありがたい資金となりそうです。

詳しくは

『ハローワークインターネットサービス 雇用保険関係 基本手当について』
https://www.hellowork.go.jp/insurance/insurance_basicbenefit.html

からご確認ください。

まとめ

普段お給料を受け取る際には、税金や社会保険料の支払いによる総支給額と手取り金額の差に『なんでこんなに色々と天引きされてるのー!?』とため息がもれることもあったかもしれませんが、このように受ける側の立場になると社会保険はとてもありがたい制度ですよね。みんなで支え合っていることが分かります。この社会保険料は、産休・育休中は届出をすれば支払い免除になりますので忘れずに行いましょう。

生活スタイルがガラッと変わるこの時期。収入と支出のバランスをもう一度見直して、今後の暮らしのマネー計画をしっかり立てていきましょう。最終回となる次回は「今こそ見直したい!ライフプランのこと・保険のこと」についてお伝えします!

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横山 沙織
横山 沙織
ファイナンシャルプランナー(2級FP技能士・AFP)。おこづかいセミナー講師。子供金銭教育をテーマに活動する団体「FPmama Friends」に所属し、親子で学ぶおこづかい教室を開催しています。双子の娘+男の子の3児子育て中のママです。趣味は温泉巡りとベランダ菜園です。