イベントレポート

「ふたりは同時に親になる」著者狩野さやかさんに聞く、夫婦が笑顔で一緒に育児をするコツ 前編

子育てが始まると「こんなにたいへんだったの?」と戸惑うことが多いですね。イメージや予想と違うことの連続で、一生懸命日々の生活を乗り切っているうちに、いつの間にかママとパパのコミュニケーションはすれ違いがちに。

どうしたら笑顔で楽しく一緒に子育てできるのかな?

「ふたりは同時に親になる 産後の「ずれ」の処方箋」の著者狩野さやかさんは、著書の中で、ママとパパの現在地を客観的に分析しています。ふたりの「ずれ」を説明しながら、どうやったらふたりで一緒に子育てできるのか?を具体的な打開策を挙げて、ママとパパを勇気づけています。

その狩野さんがワークやディスカッションを通じて、実践的に打開策を考える講座を港区男女平等参画センター(リーブラ)で開催すると聞き、参加してきました。ママの孤独はどこから生まれるのか、どうやったら解消できるのか。希望の詰まった2時間をお伝えします。

<目次>

    前編~ふたりの現在地を知ろう!

  1. ふたりの現在地①ママの変化②パパの変化
  2. 男性が「親になる」ってどういうこと?ママとの「ずれ」
  3. 「ずれ」を手遅れにしないためにできること
  4. 後編~「ふたりが同時に親になる」ためにできること

  5. 「ずれ」解消!対策のためのステップ3段階
  6. 「ずれない」ために大切なコミュニケーション3原則
  7. 今日から始める一歩(まとめ)

講師紹介 狩野さやかさん

ウェブデザイナーとして制作会社勤務・フリーランスを経て株式会社Studio947を共同設立。デザイン・制作と、書籍・記事の執筆に携わる。育児分野の活動としてpatomatoを設立し、産後の夫婦の協業をテーマにワークショップの開催や講師、コラム執筆をしている。著書に「ふたりは同時に親になる 産後の「ずれ」の処方箋」。

1ふたりの現在地

2019年2月23日、プレママとプレパパ、0歳児の育児中のひと、2歳児や3歳児のママとパパが20名ほど、港区リーブラ(男女平等参画センター)の一室に集まりました。5つのテーブルに子どもの年齢が重なりすぎないようにシャッフルして座り、講座が始まりました。

「まず、ママとパパの現在地を知るために、産前産後シートに出産前後で変化したことを書き出しましょう!」と狩野さん。一斉に書き始めるママたち、ペンが止まることはありません。一方、考えながらゆっくりとペンを進めるパパたち。

数分後に狩野さんがストップをかけましたが、止まらないママが多数。「そう、この違いなんですよね」と狩野さんは言います。「シートを見てください。ママとパパで文字量が全然違うのがわかりますか?これが、ママとパパの変化の量の違いなんです」

①ママの変化

産前産後シートは横に産前と産後の時間軸、縦に時間、身体、社会、精神と変化の種類が書かれています。ママたちの書いたシートには、どの項目も小さな文字がぎっしり。これほどの急激な変化にママたちは向き合ってきたのですね。

狩野さんはさらに、ママの変化を客観的に説明します。「最も大きくて気づきやすい身体の変化、分娩は、大けがと同じです。その大けがを抱えながら、産後の授乳と細切れの睡眠を乗り切っていきます。産後の睡眠不足は、かなりブラックな働き方をしてきたママでも、産後の方がつらいというレベルです。

時間はすべて赤ちゃんペースに追われ、トイレにも自由に行けない。例え赤ちゃんが寝ている間も、薄くだらだらとした緊張感で自由な気分はありません。

産後はしばらく働けないので、稼いでいたママにとっては社会的に降格された感覚になります。さらに、これまで経験したことのない「ママ」という未知のカテゴリーに所属する不安や緊張もありますね。

精神的には、新入社員がいきなり社長に任命された感じ。小さくてくにゃくにゃした不安定な命を預かる責任はものすごいプレッシャーです。ほとんどのママはそのプレッシャーに潰れています。それでもやらなきゃいけないから、こなしているだけです。

ママの環境変化を職場のストレスチェック表で比べると、高ストレス状態を指します。ママのストレス状態はとても危険な水準であるとママ自身もパパも認識する必要があります」

②パパの変化

ママの変化が膨大な量で、さらに後ろ向きのものが多かったのに比べて、パパの記入した変化は多くはない上に、前向きなものが多いのが印象的でした。

「男性は子どもが生まれたという責任が仕事に向きがちです。もっと仕事で成果を出したい、家族を守りたいという思いが強くなる傾向にあります。

一方で、子どもと昼間に公園に出かけると不審な目で見られたり、育児休暇取得を職場が嫌がるなど、ライトなパタハラ(パタニティハラスメント=男性の父性に対して行われる嫌がらせ)も多いです。

確かにママの変化の量と比べると、パパの変化は少ない。でも、ママとパパの「ずれ」はそれだけが原因ではありません。パパが変化したいのにできない、あるいは変化を妨げるような社会的な環境も一因です。

ふたりともが感じているストレスは、心の弱さなどの個人的な要因ではありません。環境変化や組織の問題から生じています」

2男性が「親になる」ってどういうこと?ママとの「ずれ」

よく言われる言葉に「ママは妊娠して親になる準備をするけれど、パパは産後突然親になるから、自覚が生じるまで時間がかかる」と言うものがあります。ほんとうなのでしょうか。

ママだって「突然」親になる

「妊娠も出産も予想できない突然起きることです。ママだって突然親になっているのです。180度の環境変化にポンと放り込まれて、必死で対応しているのが産後のママです。そうやって必死になって自分を親に変化させている。そうして、産前とはまったく違う時間と空気の中で生きています。

でも、パパは変化が少ない。少ないまま変化しないで生活しているから、時間の感覚、空気感も変わりません。それを隣で感じるママは孤独を感じます。パパも「親」をやっているつもりでも、ママから「周回遅れの伴走」になってしまいます。ママは諦めとイライラを行ったり来たり。

ベネッセが2011年に興味深い調査結果を発表しています。夫婦間の愛情度と幸せ感が、産後1年で急激に減っている夫婦がとても多いというものです。その後、子どもの年齢を追うごとにグラフは下がっていく。

産後のママたちはよく「こんなはずじゃなかったのに」と言います。産前は「子どもが生まれたらますますラブラブになると思っていたのに」「夫を嫌いになるなんて思っても見なかった」と」。会場内のママたちが「うんうん」と頷きます。

「ふたりが同時に親になる」ってどういうこと?

「では、男性が親になるってどういうことなのしょうか。ふたりで同時に親になるとはどういう状態なのでしょうか」狩野さんが問いを投げかけます。

「ママである自分と、「ふたりの子ども」である我が子をしっかり見てほしいですよね。そして、ママの劇的な変化を理解して、「周回遅れ」の自覚のない伴走ではなく、ママが「「ふたりで一緒に育児をしている」という心の並走感」を得たい」会場が一斉に頷きました。

3「ずれ」を手遅れにしないためにできること

ママとパパの「ずれ」は産後を過ぎればどうにかなるものなのでしょうか。「それは違う」と狩野さんは言います。「不信感は終わりません。なかったことにはならない。親世代にも話を聴くことがありますが、産後の孤独を忘れているママはいない」

それではそんな深刻な「ずれ」を手遅れの状態にしないために、「今できること」は何でしょうか。

狩野さんは「ママはシンプルに「助けて」ということ。本気でギブアップしましょう。していいんです。ひとりではこなせない分量でつぶれそうだと自信を持って伝えてください。そしてパパはママの話を聴いて、SOSを受け止めましょう。それが「ずれ」解消への第一歩です」

主催の紹介

港区男女平等参画センター(愛称=リーブラ)について

リーブラでは、男女が平等に参画できる社会の実現に向けた講座やワークショップ、講演会を企画運営しています。こうしたイベントを通じて、男女平等についての意識向上や啓発を図り、学習機会の提供を行っています。(サイトより)

URL:http://www.minatolibra.jp/

講師 狩野さやかさんの活動の紹介

狩野さんはpatomatoという団体を運営しています。patomatoでは「産後クライシス」という言葉でも語られる、産後のママとパパの「ずれ」の問題を解消すべく、講座やワークショップを各所で開催しています。

URL:https://patomato.com/


麓 加誉子
麓 加誉子
麓 加誉子(ふもと かよこ) フリーライター。
市民活動団体「パトラン松戸チーム」の広報も。
興味があるのは、不登校、教育問題、ジェンダーの問題、広報、PR、ブランディング、NPO、社会課題など。
幅広い好奇心でさまざまな分野に挑戦中。
小中学生3人の子どもたちは不登校。「毎日明るくのびのびと」、をモットーに生活中。
趣味は、服作り、家具作り、ランニング、家庭菜園、編み物、読書など。