初期費用も通勤時間もゼロ。
何か始めるなら「自宅」を拠点に…と考えるのはとても自然なこと。
特に子育て中の女性にとっては仕事の合間に家事ができる?子供にお帰りが言える!などなど、家事育児と両立できそうな具体的なシーンもイメージできるかもしれません。
台所文化伝承家、食育・受験フードアドバイザーとして活動する、つながるキッチン代表 中原麻衣子さんは2012年に自宅で料理教室を始めました。
その後、2018年に活躍の場をキッチンスタジオに移すまでの歩みについて、事業の広がりと併せてお話を伺いました。
子どもの成長とともに、ママの働き方も進化させることができる。
そんなヒントが満載の実体験は、活動のジャンルにとらわれず、私らしく働きたいと考えている女性は必読です。
※2019年12月12日大手町で開催した【PowerWomenFes!2020】Specialステージトークのレポートです。
【目次】
- 自宅教室から一歩外へ!キッチンスタジオへの歩み
- お客様のキッチンで。『家事代行×習い事×学童』トリプルプログラム
- 変化を怖がらないこと、が継続の秘訣
- お米、お箸。日本の食文化を未来につなげたい
自宅教室から一歩外へ!キッチンスタジオへの歩み
台所文化伝承家、食育・受験フードアドバイザーという肩書で活動をしていますが、もともとは企業で役員秘書をしていました。
現在、中学2年生の娘、小学4の息子、二人の子どもがいますが、二度の産休育休を挟んで13年間会社勤めをしていました。
食べることやおもてなしをすることが大好きだったこともあり、育休期間などを使って食に関わる資格を取ったり、習い事に通ったりしていました。
あくまで趣味の一環でしたが、2011年に東日本大震災を経験したことで、自分のできることで社会に貢献したいと強く思うようになり、今しかない!という気持ちで退職を決意、翌年自宅での料理教室を始めました。
子ども向けの料理教室には、ママ友の友達やその友達が参加してくれました。
おかげさまでそのうちに口コミで広がっていき、始めてから2,3年目頃には常にキャンセル待ちのお客様がいらっしゃるという状態でした。
▲当時はいわゆる『サロネーゼ』という言葉がはやっていた頃。女性が趣味や特技を活かして自宅で教室やサロンを開くライフスタイルが注目を集めていました。
テーブルに目いっぱい座っていただいても、レッスンは定員8名が限界という状況…。
お待たせしている方に申し訳ない気持ちを抱きつつも、もっと広いキッチン付きスタジオを借りるにはお金もかかるし、参加費に反映せざるを得ない…悶々としながらも、今ひとつ勇気を持てずにいました。
数年経ち、やはりキッチンスタジオを借りよう!と決意した理由は、キャンセル待ちのお客様がいるのは良くないと思ったことでした。
せっかく参加表明をしてくれている方がいるのに、そのお気持ちをこちらからシャットダウンしてしまうのはもったいない、と。
自宅教室をスタートして6年目、シェアキッチンの会員になり、レッスンの定員も13名に増やすことができました。
それでも先々のレッスンまで満席で、3,4組キャンセル待ちの方がいる状態ではありますが、、広々とした本格的なキッチンスタジオで、レッスンの環境はとても良くなったと思います。
お客様のキッチンで。『家事代行×習い事×学童』トリプルプログラム
自宅で教室をしていた頃は、生徒さんにまじって娘も一緒にお料理していました。
ただ中学受験を控え、週末含め、自宅に人が出入りしている状態では勉強に集中できないだろうと思い、生徒さんにもご理解いただき、半年ほどレッスンを休止したことがありました。
そんなある日、娘がこう言ったのです。
「ねえママ、お料理したい。最近レッスンやってないよね?」と。
娘と同じように、お料理したいと思ってくれている子がいるかもしれない。
自宅がダメならその逆で、私が生徒さんのお宅に伺うのはどうだろう、と考えました。
ここ数年、働く女性のサポートとして家事代行が流行っていますよね。
2時間で10~20品のおかずを作ったり、掃除や洗濯など色々なサービスがありますが、私に出来ることは何だろう?と考えたとき、子どもにお料理を教えること、に行き着きました。
「お料理を楽しむこと」や「将来につながるお料理のスキルを育む」こと、何よりも「食卓を大切にしたい」という想いは、自宅教室で大切にしてきたことと同じです。
そうして生まれた『感謝の食卓』では、私がお客さまのお宅に伺い、お子さんと一緒に2時間で一汁三菜を作るプログラムです。
実際ご家族で召し上がっていただく時間に私は撤収しているのですが、パパやママから「どうやって作るの?」という質問に「みりんとお酒を入れて、コトコト煮こんだんだよ」「ごぼうはアクが出るから、お水に浸しておくんだよ。」そんな会話が繰り広げられているとご報告をいただきます。
お子さんはパパやママから「ありがとう」と言われるだけですごく幸せで嬉しい気持ちになって、「またパパやママのためにお料理したい!」という意欲につながります。
同時に、いつもパパやママがこんな風に食事の支度をしてくれている、大変さに気づいたり、感謝の気持ちにもつながる、新しい食育のかたちだと思っています。
こちら
変化を怖がらないこと、が継続の秘訣
活動を初めて8年。『継続の秘訣は何ですか?』と良く聞かれますが、一番は、変化を怖がらないことだとお答えしています。
私は東日本大震災の経験を機に、今は今しかない!という想いでフリーランスという働き方を選びました。
ただ起業だけが良いわけではなく、企業に勤め続けることも選択のひとつでしょう。
子どもは本当にあっという間に成長して大きくなります。
子どもの成長に合わせて、ママ自身も進化していければ良いと思います。
フリーランスでも会社員でも、働き続けるには、家族の協力は不可欠です。
主人だけではなく子どもたちも私の働き方に協力してくれているので、「ありがとう」と感謝の言葉を口に出して伝えるようにしています。
それと、頑張りすぎないことも大切です。
よく「お料理の先生だから、ご飯づくりは苦じゃないですよね?」と言われることもありますが、イヤになる日だってあります(笑)。
時には『ママ疲れているから食べに行こう』『お惣菜買ってこよう』と手抜きをさせてもらいながら、感謝して日々のお仕事を続けています。
お米、お箸。日本の食文化を未来につなぐ
お料理を語るうえで、日本の食卓に欠かせない『お米』。
主人の故郷が熊本県というご縁もあり、熊本の棚田を守る活動をしています。
無農薬で地球にも人にも優しい、未来につながるお米作りを初めて6年目になりました。
ここ2,3年で SDGs※の考え方が普及したことで企業やメディアにも興味を持っていただけるようになったという実感がありますね。
▲テレビや新聞で紹介された熊本県山都町 通潤橋復興支援チャリティランチ
※持続可能な開発目標(SDGs)とは,2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として,2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2016年から2030年までの国際目標です。
そして、日本の食文化を語るうえで欠かせないもの…『お箸』の持ち方もお伝えしています。
以前から料理のクラス内でお箸の持ち方をお伝えしていたのですが、リクエストがあり【お箸の持ち方教室】として独立させました。
3歳半からのお子さん向けの教室なのですが、そこをなんとか…と、下は2歳から上は70代まで、幅広い年齢の方にご受講いただいています。
すると次は…幼稚園や小学校、中学校の先生、幼児教育関連の方から「お箸の持ち方の教え方を知りたい」という問い合わせが増えてきました。
そこで2020年2月からは、お箸の持ち方教室の先生を育てる講座をスタートすることになりました。
お受験や就活、婚活などお箸の持ち方を整えたい理由は様々です。
何の為にお箸をきちんと持たなければならないのか? 持てないと恥ずかしいから、だけでなく、その意味も伝えていけたらと思っています。
▼テレビ番組の企画で、中原麻衣子式『箸のトレーニング』を披露。テレビの前では箸を握りたくないと、長年コンプレックスを抱いていたタレントふかわりょうさんのお箸の持ち方もたった20分で改善!
野菜が苦手だとか、子どもに料理を教えてあげたいけれど一緒にキッチンに立つ時間が持てないとか、家庭の中で「食」にまつわる問題を感じているお母さんたちも多いです。
受験生にどんなお弁当を作ってあげたらよいか、日本の歳時を教えてあげたいけれど分からない…など、大人が意外と知らないことも多く、子どもに語ることができない、教えられないということもあります。
昔であれば解決は家庭にゆだねられたのかもしれません。
けれど時代は変わり、家事代行のようにアウトソーシングするという考え方も広まっています。
食文化や食の大切さを、良いかたちで子どもたちにつないでいくことを、日本の食文化を未来につなぐことが私の役目だと思い、これからも活動を続けていきたいと思っています。
編集後記
和食、とひとことで言っても、そこには脈々と受け継がれてきた歴史や先人の知恵、人々の暮らしが息づいているひとつの『文化』。
次世代に受け継ぎたいのは単なるレシピではないからこそ、中原さんの活動は料理の仕方を教えるに留まらないことに深く納得しました。
キャンセルが出るほどの人気教室の運営やメディアにも多く取り上げられる事業は、一朝一夕に培ったものではなく、コツコツと学びや努力を続けてきたからこそ。
種をまいてもすぐ収穫できないお米やお野菜と同じように、私らしい働き方を実らせるにも時間がかかるものだと割り切れば、どんなときも「進化の途中」と前向きに受け止められそうな勇気を持てる気がしました。
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【キッズアートクッキング倶楽部】
https://tsunagaru.kitchen/artcooking/
【感謝の食卓】− 台所家庭教師
https://tsunagaru.kitchen/kansha-no-shokutaku/
【箸の持ち方教室】個人指導
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【玄米講座】食べるエクササイズ
https://tsunagaru.kitchen/genmai-seminar/
【ウカル飯-ukaru meshi-ゼミナール】
https://tsunagaru.kitchen/ukarumeshi-seminar/
【つながるシェア田】通潤橋重要文化的景観の熊本県山都町の棚田米をあなたへ
https://tsunagaru.kitchen/share-den/
撮影協力
・acca phot/ 寺嶋 綾香
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・kumiti_camera
http://www.instagram.com/kumiti_camera
- 渡邉 加奈子
- 娘が2歳のときPowerWomenプロジェクト在宅スタッフ登録をし、アンケート入力や事務局代行などを行う。その後【笑顔で働きたいママのフェスタ】イベント本部のスタッフとして、パートタイム勤務を経て正社員に。第2子の産休育休を経て現在は短時間正社員となる。ふたりの子供たちに挟まれて寝るのが何よりの幸せ。育児がひと段落したら趣味の切り絵と三味線を再開するのが夢。
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