葛西臨海公園駅近くの自宅を開放し、『Mama Cafe』という、小さいお子さま連れで参加できるパン教室を開いている竹内絢香さん。
自身も4歳と0歳の2人の息子さんがいらっしゃる中、「子どもと一緒にいながら働く」スタイルを、もっと広めたいと頑張っていらっしゃいます。
ふんわりと優しい笑顔が印象的な竹内さんの働き方について、前編と後編に分けてお伝えします。
今回は前編です。
長く働けるか不安……その思いが学びはじめるきっかけ
父の仕事の関係で、私自身、幼少期を海外で過ごしました。
英語力を活かすべく、大学卒業後に最初に就職をしたのは、その頃開業したばかりのお台場の会員制ホテル。
フロント業務、フロアアテンダント、あとは館内の和食レストランでの接客などを行う、ホテルマンとして働いていたんです。
顧客層は高収入のエグゼクティブクラスの人々。
ですから当然、ホテルの利用者は海外からのお客様の比率も高く、日常的に英語で会話をしていました。
———お話を聞く限りでは、まさしく天職のように思えますよね。
もちろん、やりがいはあったし楽しくもあったのですが、勤務体系はシフト制で夜勤もある。「結婚出産など後々を考えると、長く続けられる仕事ではないな」と、勤め始めてしばらくした頃から、そんな思いを抱いていて。
働き方の選択肢を増やすためにも、以前から興味を持っていた料理を学ぶため、休みの日や、(シフト制なので)空いている時間を使って、大手のクッキングスクールに通うことにしたんです。
そこでは料理、パン、ケーキ、和菓子……開催されているひと通りのコースに通いました。
———和菓子?珍しいですね。
ええ(笑)、いろいろな方によく驚かれるんですが、ホテルでは和食レストランでの仕事もあったので、役立てられるといいなと思って学び始めたんです。
努力が認められクッキングスクールの講師に転職!
通っている途中で社員の方に声をかけられまして、ホテルの職をやめ、クッキングスクールの講師として働くようになりました。
このスクールは、人気講師はエプロンの色からして違うんです。
だから、社員や講師だけでなく、受講生にも「ああ、この講師は責任者なんだな」というのが、一目でわかってしまうんです。
———恐ろしいシステムですね(笑)。
そうかもしれないですね(笑)。
でも、それがあったから、どうしたら限られた時間内でより多くのことを受講生の人に理解してもらい、満足して帰ってもらえるかを、一層考えるようにもなりました。
自分自身のモチベーションになっていたと思います。
実は私、営業成績が全国で一位だったこともあるんですよ(笑)。
青天の霹靂!楽しいはずの専業主婦生活が……
結婚を経て、第一子の出産を機にこのクッキングスクールを退職しました。
当初は、子どもの子育てや家事にと、これから始まる専業主婦生活をどのように送ろうかいろいろと思い描いて、とても楽しみにしていたんです。
ところが、息子が生後6ヶ月くらいの時、産後うつのような状態になってしまって……。
夫は家事にも育児にもとても協力的な人で、『疲れたら休んでていいよ』と言ってくれる。多分、世間から見れば私はとても恵まれている。なのにどんどん、気分が塞ぎ込みがちになってしまって。
自分でも理由がわからなく、それで余計に落ち込む……完全に悪循環にはまっていました。
そんな時、ママ友がある集まりに連れ出してくれたんです。
当時は東雲に住んでいたのですが、私と同じように、手に職を持っていながらも様々な事情で働くことができないママたちの集まりでした。
———メンバーは何名くらいいたんですか?
全部で30名くらいだったかな?
ほとんどの方が何かしらの資格をお持ちになっていて、近所の集会所のようなスペースを借りて、持ち回りで教室を開いていたんです。
今日はこの人が講師で、私は参加者、みたいな感じで。
参加者ではあるけれど、あるときは講師になる人もいる、そういった集まりでした。
———どのような教室が開かれていたんですか?
マタニティヨガやリトミック、ベビーマッサージもありましたし、本当に色々です。
全ての教室が子連れで参加でき、参加費はほとんどがワンコイン以内だったので、参加しやすくて大盛況でした。
働くって楽しい! 自分の経験が教室のヒントに
はじめは私も参加するのみだったんですが、そこで講師をやっているママ友に、「あなたもパン講座、開いてみない?」と勧められて。
子どもがいるところで教えるって大丈夫だろうかという不安や、子育ての合間に教室の準備をすることの大変さもあったのですが、それよりも、久々に自分がワクワクしているのに気づいたんです。
パン作りを教えている時間も、心から楽しいと思えて息抜きになっていて……。
そこでハッとしたんですね。
ああ、私は専業主婦に向いていないんだな、働いていないとダメになってしまうんだな、働くことが好きだったんだな、と。
このときの一連の経験が、今につながっているように思います。
———今のお仕事への布石になったということでしょうか?
はい。
それまでの自分自身もそうでしたが、世の中のママたちって、果たして自分の時間を取れているんだろうか、と。自分の息抜きの時間すらとれないママたちがたくさんいるんじゃないか、と考えたんです。
そんなママたちの何らかの力になりたいという思いが、「子連れパン教室」開催の原動力になったと思うんです。
(後編に続きます)
- 森 雅美
- 派遣社員やフリーランスとして出版社や制作会社で様々な媒体の制作に携わった後、2012年の出産を機に在宅勤務主体の働き方にシフト。以降、ライター、ディレクターとして活動中。 今年の目標は「趣味 ジョギング」と言い切れるようになること。