2016年4月、熊本地震が発生し、熊本県と大分県に大きな被害をもたらしました。
南海トラフ巨大地震もいつ来てもおかしくないと言われながら、もう何年も経過しています。
日本列島に住む私達は、全国どこに住んでいても「大きな地震は身近に起こり得ること」として、備えをしておかなければなりません。
子どもの頃に聞いた「防災対策」はもう古かった?!
防災の知識はある程度持っているから大丈夫、と考えているママの方もいらっしゃるでしょう。
でもその知識、ご自身が子供の頃に学校で学んだ内容のままではないですか?
私自身も、小学校で学んだ防災知識をそのままにしている一人でした。
ところが先日、防災講座に参加する機会があり、内容を聞いて驚きました。
いくつかをご紹介いたします。
■地震が起きたらすぐに火を消す!はNG
現在はマイコンメーターにより震度5弱相当の揺れで自動的にガスメーターの部分でガスが遮断されるため、火を止めに行く必要はないのだそうです。
油や熱湯で大やけどをする恐れがあるので、コンロには近づかないでくださいね。
■まずは出口を確保!はNG
大きな地震が起きた際は、窓ガラスが割れたり、家具家電の転倒でけがをする恐れがあります。
なので、今は出口の確保よりも身の安全確保が最優先、といわれているのです。
このように、現在防災で重要とされているポイントは、私たちが子供の頃に聞いたものとは大きく変わっているのです。
なので、私たちが持つ間違った地震対策の考え方を改め、足りないものは何かについて考えてみましょう。
「地震に対する備え」何をイメージしますか?
「常日頃から地震に対する備えをしましょう」
この言葉を聞いて、あなたは具体的にどんな備えをしようと考えますか?
多くの方はまず、水や食料の備蓄をしたり、非常持ち出し袋を用意したりを思いつくと思います。
避難場所を確認したり、避難訓練に参加したりといった備えもありますね。
これらの備えは「被災後の対策」。
とても重要な備えではありますが、地震対策はこれだけでは十分ではありません。
地震対策として忘れてはならないもう1つの備え。
それが、住まいの耐震補強や家具の固定といった「死なないための対策」なのです。
死なないための対策とは
手間も費用もかかるからと、つい後回しにしがちな「死なないための対策」。
ですが、意識してこの対策を進めることで、災害時に発生し得る被害をより小さなものにすることができます。
このような考え方を「減災」といいます。
近年では、この「減災」の考え方が取り入れられ、市区町村の防災体制も変化してきました。
過去には避難場所の備蓄や設備強化といった、被災後の安心に力を入れていましたが、近年では住宅耐震や家具固定の促進といった、「減災」のための事前準備に力を入れるようになったのです。
「死なないための対策」の重要性は、過去の大地震の教訓からもうかがえます。
阪神淡路大震災では、亡くなった方の死亡原因のうち、8割以上が家屋倒壊・家具転倒等による圧死・窒息死でした。
また、ケガをした人の原因の第1位は家具の転倒によるものです。
一方で、東日本大震災後に実施した「自宅の防災対策実施率」の調査結果では、「死なないための対策」は他の対策に比較して進んでいません。
被災後の備えは、命があってはじめて力を発揮するものです。
なので、まずは地震の揺れから命を守るための対策を優先させる必要があります。
防災講座の講師の方は、次のような話をされていました。
「家庭で子供に机の下にもぐる訓練を100回させるより、家具を1回固定する方が効果があります」
私たちも、地震が起きたら机の下に避難する、という訓練を小さい頃から何度も行いましたよね。
それも確かに重要で、子供にきちんと教えるべきでしょう。
しかし、その訓練のイメージが強すぎて、親として出来ることである「家具を固定する」という対策に、私自身なかなか目が向きませんでした。
講師の方の一言でその重要性に改めて気付かされました。
皆さんも、普段生活している空間をもう一度見渡して、「減災」のために必要な対策を考えてみましょう。
家具の固定方法は器具により効果が違います!
家具の固定方法には、ストッパー式、マット式、ポール式、ベルト式、L字金具などの方法があります。
単独で使用する場合には、下図のように転倒防止効果に違いがあります。
下地材の位置を確認して、硬いところにL字金具で固定する方法が最も効果的ですが、賃貸住宅などで壁に穴を開けられない場合は、ポール式+ストッパー式など、複数の転倒防止策を組み合わせることで耐震効果を上げることができます。
また、ガラスの飛散防止対策も大切です。
窓ガラスだけでなく、戸棚やサイドボードのガラス部分も忘れずに飛散防止フィルムを貼っておきましょう。
大地震の後には、津波避難の必要性も考えられます。
ガラスが飛び散らないようにすることは、直接のケガを防ぐだけでなく、揺れが収まった後の避難をスムーズにすることができます。
ビンを置いている棚などは、棚本体を固定することに加え、棚板に滑り止めのシートを敷いたり、棚の前面に落下防止柵を取り付けたりすることでビンの落下を防ぎます。
身の安全を確保することで、「救助される側」から「救助する側」に
「減災」を意識することの重要性は他にもあります。
一人一人が、「減災」のための対策をしっかり行い、自分や家族のもしもの時の身の安全を確保することによって、万が一のとき、「救助される側」ではなく、「救助する側」になることができるのです。
自分が救助する側に回ることで、地域での助け手を増やすことができ、そのことが結果的に、地域全体での「減災」へとつながっていくのです。
いつかそのうち、と考えがちな「減災」対策。
気持ちが冷めないうちに、お買い物がてら早速、ホームセンターを覗いてみてはいかがですか?
※富士市に確認し、富士市防災マップH26年3月版,P18より図を引用しています。
- 横山 沙織
- ファイナンシャルプランナー(2級FP技能士・AFP)。おこづかいセミナー講師。子供金銭教育をテーマに活動する団体「FPmama Friends」に所属し、親子で学ぶおこづかい教室を開催しています。双子の娘+男の子の3児子育て中のママです。趣味は温泉巡りとベランダ菜園です。