「保育園、幼稚園、小学校と別々の場所にいる三姉妹。もし地震が起きたら誰から迎えに行くべきか…」ふと、ひとりのママが漏らしたこんな言葉。
あなたならどの順番でお迎えに行きますか?
『子どもと災害に遭遇したら、どうする?』をテーマに開催したOneness交流会。あなたもぜひ一緒に考えてみませんか?
※Oneness交流会は、ママや子供たちのために活動している人が中心となり「子ども達の未来のためにマジメにディスカッション」する交流会です。防災をテーマに開催した交流会の様子も併せてお届けします。
目次
1.今、ここで災害が起きたら、どうする?
2.子供は意外と知っている
3.大事なのはカスタマイズすること
4.やってみよう、10秒イメージトレーニング
5.最後にもうひとつ
1.今、ここで災害が起きたら、どうする?
「料理中に地震が起きた場合、火を止めるのが先か、子供を守るのが先か?」
「東日本大震災のあと、災害について考えるようになりました。当時三人の子供たちは保育園、幼稚園、小学校と別々の場所に通っていました。もし何かあったとき誰から迎えに行くべきか、考えてみたけれど結局どの順番が正解なのか、答えが出なかったのです…。」
「女性限定のスペースを運営しており、海からも近いので防災の座談会を開いたりしています。ママたちからは『自分が取り乱さないことが一番だよね』という話が出たりします。」
台風や大雨による被害については、あらかじめ学校が休校になったり不要不急の外出を控える傾向にあるため、今ここで災害が起きたら?というテーマでしたが、おのずと『地震』や『津波』をイメージした方が多かったようです。
考えれば考えるほど不安は尽きないもの…ただ不安を感じるのも悪いことばかりではなさそうです。
交流会に参加してくれた防災備蓄収納マスタープランナーの資格を持つ暮らしアレンジing代表神村 咲妃さんからはこんなアドバイスをいただきました。
「不安を感じて、日ごろから『こんなときはどうする?』とイメージするのは悪いことではありません。災害を怖がるだけではなく、不安を認識して、乗り越え方を考えておくのは大事なことです。どうやって自分の命を守るか?非常食や非常ライトなど、モノを備えることも大切だけど、心の備えをしておくことも大切ですよ。」
2.子供は意外と知っている
交流会では子供たちが学校で受けている「防災訓練」についても話題になりました。
地震や火事、竜巻や水害などの自然災害のほか、最近では不審者に備えた訓練も行っているそう。
さまざなシチュエーションを想定しながら、繰り返し訓練をしている子供たちは自然とカラダが動くことに加え、一番大切なことを良く知っています。それは「自分の命を守ること」。
落下物から頭を守る、煙を吸い込まないようにタオルや袖口を口に当てる、窓ガラスから離れる、とてもシンプルなことですが、いざその状況に直面した時、私たちは対応できるでしょうか?
一部の職場やマンションを除いて、大人になってから「防災訓練」をする機会は少ないのが現状。
あなたが「防災訓練」をしたのはいつが最後でしょうか?そのときの知識を正しく覚えているでしょうか?
意外と大人のほうがパニックになって、勝手な行動をとってしまうことも懸念されます。
状況にもよりますが、例えば公共交通機関の利用中や商業施設の建物内にいる場合は、集団行動を守り管理者の誘導に従うということが安全上大切になることもあります。
親は子供を守る立場、子供に教える存在、と決めつけず、最新情報を知っている子どもに「こんなとき、どうするの?」と教えてもらう、そんな考え方をしてもいいのかもしれません。
3.大事なのはカスタマイズすること
交流会でママたちと会話をしながらも、それぞれの頭の中で考えている状況や不安が同じではないことにも気づきました。
住んでいるのが戸建てだったりマンションだったり、川の近くだったり海の近くだったり、子供が赤ちゃんなのかひとりで行動する時間が長い年齢なのか、ひとりひとり状況が異なります。
ここではシチュエーション別に「こんなとき、どうする?」の一例をご紹介します。
(ご紹介する内容は地震の揺れを感じた直後の『初動』に絞っています。)
家の中
部屋の中
座布団やクッションで頭を覆って身を守り、避難経路確保のため直ちにドアを開ける。
トイレ
まずドアを開け、閉じ込められるのを防ぎ、玄関など安全な場所へ移動する。
お風呂
バスルームは鏡やガラスが多く、揺れで破損物が飛び散りケガをしやすい場所。洗面器やお風呂のふたなどを頭にかぶり、衣類やバスタオルを持って、逃げられるようにドアを開ける。
料理中
地震で怖いのは家事。まず火を消すこと。ただコンロから離れた場所にいる場合、揺れている最中に火を消しに行くのは危険です。(最近のガスコンロは大きな揺れを感じるとガスが自動で止まる装置がついているものも多くあります)
また、熱いお鍋の中身や包丁、電化製品や食器など、揺れによって「凶器」に変わるものがたくさんあるのがキッチンです。
身の危険を冒してまでキッチンに近づく必要はありません。コンロの周りには燃えやすいものを置かない、包丁は使い終わったらしまっておく、食器棚の転倒防止や後付けできる耐震ラッチを付けるなど、普段からの対策が重要ですね。
家の外
車を運転しているとき
慌てて止まらない(揺れの大きさにもよりますが、周囲のドライバーが地震に気づいていない場合もある)周囲の状況を確認しながら、ハザードランプを点滅させるなどして注意喚起しゆっくりとスピードを落とす。
ゆっくりとハンドルをきって安全な方法で道路の左側にクルマを寄せ停止させる。
電車を利用中
地震により緊急停止した列車は、安全が確認できるまでは運転を再開することができません。
ほとんどの鉄道会社では、震度5強以上の揺れが確認された場合は線路の徒歩点検を行うため、運転再開までは相当の時間がかかります。指示に従い勝手に車外に出たりしない。
また駅構内にいる場合は落下物に注意する。
エレベーターに乗っているとき
揺れを感じたら行先ボタンをすべて押し、停止した階で降りる。
もしエレベーターに閉じ込められてしまったら備え付けのインターホンで助けを呼ぶ。無理やり扉をこじ開けようとしたりせず、救助を待つ。
外出先で子どもと災害に遭遇した場合、焦らず慌てず、まずは身を守ることを一番に考えムリな動きはしないこと。
「オムツはもう1枚余計に持っていこう」
「ぐずったとき用にお菓子を隠し持っていこう」
「今日はベビーカーだけど、ぐずったときのために抱っこ紐も持っていこう」
普段から備え上手なママは多いはず。小さな備えがあることで、少しだけ自分の心も休まるかもしれません。
また、戸建てなら家の外に避難したほうが良いけれど、高層マンションなら家の外に出ないほうが良い、避難所での待ち合わせ場所を決めておくことも大事だけれど、住宅密集地では避難所から人が溢れてしまうので自宅待機をしたほうが良いなど、様々なシチュエーションが考えられる中「これが正解」を決めつけてしまうことは安易だと感じました。
「ただひとつ『命を守る』ことが最優先。 地震の場合落下物から「頭を守る」ことが重要だということも、ママにしっかり覚えておいてほしいことです。」
『コミュニティの災害防災拠点=レジリエンカフェ』を展開するNPO法人チルドリンの代表でもあり、Onenessプロジェクトの発起人でもある蒲生美智代さんはそう言います。
あんなときこんな時と様々な状況をイメージしてしまうのはママの特性。
様々な状況が考えられるため「この選択肢がベスト」という正解はありませんが、初動として大切なのは「命を守る」「頭を守る」こと。なぜなら、命を守れないとその後の避難も何もないからです。
お腹を空かせたらかわいそう…と非常食を買い込んでみたり、電気が止まって寒かったらどうしよう…と寝袋を用意してみたり、子供を守る母親としてたくさんの不安があるからこそ非常食や防災グッズなど『モノ』の備えに意識がいきがちですが(これも大切なことですが)命を守るために重要な『初動』を意識できていなったことに私自身気づきました。
ただ今回交流会で話し合ったように「こんなときどうする?」というイメージトレーニングを重ねることで『初動』についても意識できそうです。
4.やってみよう「10秒イメージトレーニング」
「まず、晴れた日の昼間。今ここで地震が起きたらどうするか?からイメージしてみるのがやりやすいですよ。」そう教えてくれたのは暮らしアレンジing代表神村 咲妃さん。
次に夜、寒い季節、外出先、など様々なシチュエーションで「今ここで災害が起きたら?」をイメージトレーニングしていきます。10秒もあればできそうですね。
災害に備えるということは非常食を買い集めることではない、と繰り返し説く神村さん。
防災備蓄収納マスタープランナーとして個人宅での収納アドバイスも数多く行う神村さん曰く「せっかく非常食や防災グッズをたくさん用意しているのに、クローゼットの一番奥に押し込められていて、いざというとき手に取れなかったり、どこにいったっけ?と存在を忘れてしまう方も少なくないのです。」とのこと。
普段からイメージすることで初動はもちろん、不安からの無駄買いを減らしたり、防災グッズの置き場を工夫したりすることにもつながりそうです。
5.最後にもうひとつ
いざというとき、気持ちを落ち着かせ冷静になるには「誰かと一緒にいる」ことも大切なこと。
誰かが「大丈夫!落ち着きましょう!」と声を発することで、我に返ることができるかもしれない。
不安を分かち合える相手がいることで、乗り越えられるかもしれない。
落ち込んでしまうママを支えあう力が地域のコミュニティにはあるんです、とチルドリン代表の蒲生さんは言います。
また前述した防災イメージトレーニングも、同じ地域、似た状況のママと話すことでより具体的に考えることができます。
川の近く、海の近くなど地域の特性や子供を迎えに行く道の確認など、ひとりでは気づかないことを違う視点から発見してくれるかもしれません。何より、困ったとき頼りあえること、同じ地域での情報共有ができる相手がいることほど心強いことはありません。
SNSで情報を拡散したりニュースをシェアする、現代ならではの助け合いもある一方でオフラインで情報共有ができる「ご近所さん」も災害時の心強い味方なのです。
1月には阪神淡路大震災、3月には東日本大震災の追悼行事が行われることで、災害への意識も高まる時期になりそうです。ぜひ「こんなときどうする?」というイメージトレーニングを、ご夫婦で、親子で、地域のママ友としてみてはいかがでしょうか?
- 渡邉 加奈子
- 娘が2歳のときPowerWomenプロジェクト在宅スタッフ登録をし、アンケート入力や事務局代行などを行う。その後【笑顔で働きたいママのフェスタ】イベント本部のスタッフとして、パートタイム勤務を経て正社員に。第2子の産休育休を経て現在は短時間正社員となる。ふたりの子供たちに挟まれて寝るのが何よりの幸せ。育児がひと段落したら趣味の切り絵と三味線を再開するのが夢。
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