昨今、多くの芸能人が「がん」との闘病を公表しています。
子宮頸がんをはじめとする種類の「がん」の原因となるのは、ヒトパピローマ(HPV)と呼ばれるウイルス。
誰でも感染するリスクのあるこのウイルスですが、検診による早期発見・早期治療で治すことができるんです。
そこでこのHPV(ヒトパピローマ)ウイルスの特徴や感染の経路、その予防法や早期発見の方法などを解説します。
女性にとっては他人事でない「子宮頸がん」
子宮頸がんとは、ウイルスや細菌の感染が原因となるがんのうち、20代~40代でもっとも発症しやすく、女性の生活を一変させてしまう病です。
子宮頸がんは、子宮の入り口部分の細胞ががん化することにより発症します。
ある程度がんが広がった段階で発見されると、子宮や卵巣の切除が必要となり、将来の出産に差し支えることがあります。
また、進行の度合いによっては、命を落とすこともあります。
がんを引き起こす原因の一つ、ヒトパピローマウイルス
さまざまな種類がある「がん」は、その原因となるウイルスや菌もさまざまです。
たとえば、ピロリ菌などは、胃がんの原因として有名です。
そんな中、子宮頸がんの原因の90%を占めると言われているのが、ヒトパピローマ(以下HPV)ウイルスなのです。
HPV(ヒトパピローマ)ウイルスの特徴とは?
1.感染力が強い
HPVウイルスは、性体験のある女性の約80%が一生に一度以上は感染すると推計されるほど、非常に感染力が強いウイルスです。
HPVウイルスは主に性行為で感染するため、感染は性行為が活発な年代に多いのが特徴です。
ただし、感染したらすぐに「がん」になるかというと、そうではありません。
個人差はあるものの、多くは5年以上の持続感染により、がんを発症します。
HPVウイルスに感染しても、約90%のウイルスは1~2年以内に自然に消えてくれます。
しかし、残った約10%のウイルスが持続感染によって増殖すると、がん化を抑える働きをする遺伝子を壊してしまうのです。
また、子宮頸がんだけではなく、膣がん、外陰がんなど、他のがんが発症することもあります。
2.型の種類が豊富である
HPVウイルスには100以上の型があります。
中でも、がんの原因となるのは、15種類程度の高リスク型と呼ばれるウイルスです。
20代でHPVウイルスに感染すると、この高リスク型への感染の可能性が高まります。
3.自覚症状がない
もう一つの特徴は、感染しても自覚症状がないということです。
先述したとおり、HPVウイルスに感染しても、約90%のウイルスは1~2年以内に自然に消えることが多いです。
残りの10%も一般的には5~10年かけてがんに変化をするので、自覚症状が出る頃には、感染からかなりの時間が経過しています。
4.男性にも感染の危険がある
HPVウイルスは主に性行為で感染します。
そのため、感染するのは女性に限ったことではありません。
男性の陰茎がんや、男女問わず発症する肛門がんは男性にも感染のリスクがあります。
また、オーラルセックスが原因でHPVウイルスを発症し、口腔がんや咽頭がんの原因となる場合もあります。
HPV(ヒトパピローマ)ウイルスへの感染を予防するには
このように感染力が強く、男性にも感染する可能性があるHPVウイルスは、さまざまながんの原因になっています。
しかし、感染を予防し、万が一感染しても早期に発見・治療を行えば、健康への被害は最小限に収めることができるのです。
以下に、HPV(ヒトパピローマ)ウイルスへの感染を予防し、早期発見をするためのいくつかのポイントを記します。
1.禁煙
HPVウイルスは、免疫の力によって、感染してから1年以内に約70%、2年以内に90%が消えると言われています。
ウイルスを消す方法が特にあるわけではなく、感染者本人の免疫力に依存する部分が多いのですが、喫煙者はHPVウイルスが消えにくいという研究報告があります。
予防の方法として、まず、禁煙をすることが効果的です。
2.不特定多数の人との性交渉を避ける
HPVウイルスは性交渉で感染することから、パートナーが多いと、当然感染のリスクも増加し、ひいてはHPVウイルスが原因のがんになるリスクも増加します。
健康のため、不特定多数の人との性交渉は避けることが大切です。
3.定期健診を受ける
がんは、早期発見・早期治療で治すことができる病気です。
特に発症の多い年代に入った女性は、定期的な検診を受けることで早期発見が可能です。
また、男性もかかる可能性のある肛門がんなども、大腸がん検診で発見される場合もあります。
定期的な検診を受けるようにしましょう。
4.ワクチンの接種
子宮頸がんはもちろん、HPVウイルスが原因のあらゆるがんの撲滅を目指し、オーストラリアやアメリカ合衆国ではHPVワクチンの接種が推奨されています。
現在、日本では子宮頸がんの予防ワクチンの積極的勧奨は見送られています。
もし国が安全性を確認したら、ワクチンを接種して、がんの予防をすることをお勧めします。
おわりに
HPVウイルスが原因で引き起こされるさまざまながん。
女性に限らず男性も、また年齢も多岐に渡って、感染のリスクがあることが報告されています。
感染を予防することはもちろんのこと、定期的な検診を受けて、万が一感染してしまった場合に備えておきましょう。
- ともえ編集部